業務用アパートを取壊したときの損失について
私は、今年5月に賃貸用木造アパートを取り壊して、
そこに鉄筋コンクリート造りのマンションを建築しました。
今年10月から賃貸しています。
本年の私の不動産所得はいくらになりますか?
○旧木造アパート
賃貸料収入 50万円
必要経費 120万円(取壊しによる除却損失90万円が含まれています)
○新築マンション
賃貸料収入 100万円
必要経費 80万円
アドバイス
旧アパートの取壊しの時の不動産所得が
事業的規模かどうかで不動産所得は異なります。
業務用固定資産の取壊しなどによる資産損失は、必要経費にできるの?
不動産所得のもとになっている
固定資産の取壊しなどによる資産損失が、
全額必要経費にできるかどうかは、
取壊しの時の不動産所得が事業的規模なのか、
非事業的規模なのかによって異なります。
どのように異なるのですか?
事業的規模の場合は、
資産損失の全額を必要経費にできますが、
非事業的規模の場合は、
その年の不動産所得※の金額が限度になります。
ただし、取壊し費用は、
資産損失ではありませんので、
規模にかかわらず、全額必要経費にできます。
※資産損失を控除する前です。
具体的な不動産所得はいくらになりますか?
■事業的規模の場合
旧アパートの資産損失を全額必要経費にします。
(1) 総収入金額
50万円+100万円=150万円
(2) 必要経費
120万円+80万円=200万円
(3) 不動産所得
150万円−200万円=△50万円
■非事業的規模の場合
90万円の除却損失(資産損失)のうち、必要経費にできるのは、
その90万円を必要経費にする前の不動産所得
40万円(総収入金額150万円−必要経費110万円)
が限度になります。
よって、50万円の資産損失は、必要経費にできないことになります。
(1) 総収入金額
50万円100万円=150万円
(2) 必要経費
(120万円−50万円)+80万円=150万円
(3) 不動産所得
150万円−150万円=0円
※不動産所得は赤字にはなりませんので、他の所得との損益通算はできませんのでご注意下さい。
事業的規模かどうかの判定はどのようにするのですか?
建物の貸付けが事業的規模かどうかの判定は、
社会通念上、
事業と呼べる規模で行なわれているかどうかで判断すべきですが、
次のどちらかにあてはまる場合には、
事業として行なわれているものとされます。
●貸間、アパートなどは、貸すことができる独立した部屋数がおおむね10以上である。
●独立家屋の貸付は、おおむね5棟以上である。
※賃貸料収入・貸付資産の管理の状況などからみて上記に準ずる事情がある場合には、特に反証がなければ事業として行なわれているものとされています。
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